MOTET / 改修現場ガイド

二重膜式ガスホルダーの内膜交換手順(前編)

現況調査、減圧、既設外膜の揚重、損傷内膜の撤去、底膜確認までの現場記録

読了目安 13 分

改修現場ガイド / 二重膜式ガスホルダー

既設外膜を残して内膜交換を行う二重膜式ガスホルダー
1. 本改修では損傷した内膜のみを交換し、点検適合した既設外膜は再使用します。案件名と場所は匿名化しています。

内膜交換は、古い膜を外して新しい膜を敷くだけの作業ではありません。外膜の再使用可否、取合い、締付けとシール、計装、ブロワの状態を調査し、既設システムがなぜ損傷したかを記録することから始まります。

1. 改修範囲:外膜再使用・内膜交換

現場では、外膜表面、溶着部、貫通部、支持空気系統、外周締付け部を最初に調査します。「膨らむ」だけでは再使用可とは判断できず、強度、空気室、復旧に影響する亀裂、硬化、摩耗、変形がないことを確認します。

本案件では外膜は再使用可能と判断した一方、旧内膜と複数の取合いはそのまま流用できませんでした。前編では、現況調査、減圧、外膜の保護揚重、旧内膜撤去、底膜と外周取合いの露出までを扱います。

安全上の注意

本記事は工程と現場所見を示すもので、案件専用施工要領、作業許可、ガス測定、エネルギー隔離、揚重計画、現地法令の代替ではありません。作業は資格・権限を有するチームが実施してください。

2. 撤去前の点検:不具合は取合い部に現れる

ケーブル・ホース貫通部には仮設的な覆いと局部シールが見られ、荷重移行、ストレインリリーフ、連続シールの確認性が不足していました。貫通スリーブは単なる目隠し袋ではなく、膜材適合性、連続形状、検査可能な溶着部を備える必要があります。

既設のホース・センサー貫通部
2. ホース、ケーブル、覆い、継手が集中し、連続シールの確認が難しく、局部荷重が膜面へ伝わりやすい状態です。
旧膜端部をめくって確認した締付け・シール面
3. 旧膜端部の下に不規則な積層、汚染、局部シールが見られます。改修では締付け順序と接触面を完全に露出させます。

レベル計、フランジ、信号線は一体で点検します。センサーが信号を出しても、フランジシール、ボルト、防食、ケーブル固定が適合しているとは限りません。腐食や仮設カバーは浸水と局部応力、保守性低下につながります。

保護カバーを外したレベル計フランジ
4. カバーを外して初めてボルトと中心接続部を確認できます。外観を隠すことは保守可能なシール設計の代替になりません。
取り外して点検したレベルセンサー
5. 取外し後は測定範囲、取付方向、プロセス接続、ケーブル、再取付基準を確認します。
既設計装フランジと締結部の腐食状況
6. 腐食、仮設カバー、確認困難な接触面が併存しており、復旧前に分解してフランジ、締結部、シール面を確認します。
現場で点検した支持空気ブロワ
7. ブロワ、フレキ接続、逆止・調圧経路、圧力計、制御信号を一体で確認します。

01

シール確認が困難

多層の覆いと局部シーラントが接触面を隠しています。

02

荷重経路が不明確

ホース・ケーブル荷重が膜面に直接作用する可能性があります。

03

保守性不足

分解前にボルト、フランジ、溶着部、シール材の状態を確認できません。

3. 管理された減圧:萎ませるだけではない

解体前にガス入出、接続プロセス、残圧、危険エネルギーを承認手順で隔離し、雰囲気を継続確認します。支持空気停止後は、局部折れ、付属品の引張り、危険区域への立入りを防ぎながら外膜を段階的に降下させます。

安全上、一般ガイドは現場専用手順の代替ではありません。EPA AgSTAR は点検・保全・安全を独立章で扱い、OSHA 1910.147 は保全前の危険エネルギー隔離と確認を求めています。実際には現地法令と事業者手順を優先します。 EPA AgSTAR · OSHA 1910.147

減圧後に降下した既設外膜
8. 外膜降下後、しわ、付属品、フレキ接続を整理してから外周解体と揚重準備へ進みます。
ガスホルダー横に配置したクレーン
9. クレーン配置後も、吊点、玉掛け、気象、合図、立入禁止区域を確認してから揚重します。

4. 外膜再使用:損傷させない揚重

再使用する外膜は、廃棄撤去とは扱いが異なります。方向・基準を表示し、確認した支持位置で集束し、地上誘導によりボルト、手すり、鋭利端部、汚染面との接触を防ぎます。

既設外膜を集束して揚重する作業
10. 中央で段階的に集束し、地上作業員が折れと接触点を管理します。
既設外膜を吊り上げて確保した内膜作業空間
11. 作業面から離れた後も、ねじれ、揺れ、周辺鋼材との接触を防ぎます。

5. 外膜揚重後に見えた内膜損傷

旧内膜には黄褐色の汚染、滞留液、付着物が広範囲に見られました。現場で硫黄ペーストと呼ばれても、写真で証明できるのは付着物の存在までです。材料選定、洗浄、廃棄に影響する場合は分析します。

外膜撤去後に露出した旧内膜
12. 異なる色の膜片、汚れ、滞留液、折れ跡が確認でき、損傷調査面が露出しました。
旧内膜層間の黄褐色付着物と滞留液
13. 付着物は折れ部と低部に集中し、清掃、凝縮液管理、材料適合性を再評価します。
旧内膜溶着部に生じた破断開口
14. 破断は溶着線方向に進展しており接合系の破損を示します。主因は断面と運転記録を併せて評価します。

技術判断

この破損は単純な当て布補修では解決できません。膜材、溶着条件、接合配置、繰返し荷重、化学環境、外周固定のシステムリスクを示します。試験片と記録がない段階では「接合系の破損は明確、根本原因は要検証」と評価します。

6. 旧内膜撤去と締付け部・底膜の確認

旧内膜を外周締付け部から段階的に外し、管理状態で集束・撤去します。撤去したチャンネル、押え板、締結部には腐食と汚染があり、新膜をそのまま重ねることはできません。再使用可否は断面減少、平面度、穴位置、鋭利端部、防食状態で判断します。

撤去後に腐食が確認された締付けチャンネル
15. 腐食は穴周辺と湿潤部に集中し、表面外観だけでは接触面の再使用可否を判断できません。
撤去して点検した押え板とボルト穴
16. 押え板は連続・均一で鋭利部のない締付け面を形成する必要があり、変形、腐食、穴損傷は荷重分布を乱します。
旧内膜を集束して撤去する揚重作業
17. 撤去時は汚染物、滞留液、鋭利な旧部品を管理し、底膜と再使用外膜の二次汚染を防ぎます。
旧内膜撤去後に露出した汚染底膜
18. 黒色・黄褐色の汚染、滞留痕、外周残渣が見られます。前編の終点であり、新内膜を確実に施工するための出発点です。

7. 解体から分かる専門施工の7つの要点

01

押え板は連続・平坦・鋭利部なしとし、穴位置と荷重分布を確認する。

02

膜材・媒体に適合する連続シール材を使用し、任意のシーラントで圧縮シールを代用しない。

03

貫通スリーブは溶着・検査・保守が可能な専用構造とする。

04

ケーブル・ホースは独立支持とストレインリリーフを設け、膜面へ荷重を伝えない。

05

溶着部は安定した施工条件、試験片・記録、トレーサブルな検査を確保する。外観だけで合否を決めない。

06

ブロワ、調圧、圧力・レベル信号、警報、インターロックを一体で試運転する。

07

新膜施工前に底膜、フランジ、締付け材、作業面の清掃・乾燥・受入確認を完了する。

8. 後編予告

撤去完了後、新内膜の寿命を左右する施工を後編で紹介します。

  • 底膜・フランジ・締付け部の清掃確認
  • 新内膜の方向確認・展開・芯出し
  • 連続シール材と段階締付け
  • 貫通部・レベル計・ケーブル復旧
  • 既設外膜の復旧・方向合わせ・固定
  • 段階膨張・漏れ・信号・インターロック確認

よくある質問

既設のアウターメンブレンを残してインナーメンブレンだけ交換できますか?

アウターメンブレン本体、溶着部、取合い部、残存性能が点検で適合すれば可能です。作業中は再使用部品として方向表示、養生、管理された揚重を行います。

内膜交換時に既設外膜を吊り上げる理由は?

使用可能な外膜を廃棄せず、内膜の点検・撤去スペースを確保するためです。吊点、風速制限、経路、膜材保護は承認済みの揚重計画で定めます。

旧内膜上の黄褐色の付着物は硫黄ですか?

凝縮液に伴う含硫付着物やプロセス由来残渣の可能性があり、現場では硫黄ペーストと呼ばれることがあります。外観だけでは成分を確定できず、必要に応じて分析します。

溶着部の破断だけで溶着不良と断定できますか?

断定できません。接合系の破損を示しますが、溶着不足、形状、繰返し応力、経年劣化、化学的影響などを断面と運転履歴から評価します。

現場シーラントで外周シール材を代用できますか?

原則として代用しません。連続した適合シール材で所定の圧縮面を形成し、シーラントは承認設計に規定がある場合のみ補助的に使用します。

後編では何を紹介しますか?

底膜・フランジ面の処理、新内膜の配置、外周シールと締付け、貫通部、外膜復旧、段階的な膨張、漏れ確認、機能試運転を紹介します。

内膜交換・改修相談

損傷した取合いを確認してから交換方法を決めます。

形式、寸法、ガス組成、損傷写真、停止可能期間をご提示ください。外膜再使用可否、内膜交換範囲、現場条件を評価します。

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